本物って? レプリカって?

フライトジャケットと言うと、まず頭に浮かぶのは米軍のものなのですが、
実際には世界各国の軍隊でそれぞれ独自のものが存在します。
ただ、やはり米軍の物が大勢を占めるのが実情ですので、
ここでは米軍の物に限定して解説しています。

※※※ 「本物」 と 「実物」

古くから、サープラス屋さんでは、レプリカ商品に対して、
軍で使用された本物のサープラス品を「実物」と表記してきました。
ここでは、それにならって「実物」と表記いたします。
慣れていない方には若干の違和感があるかもしれませんが、
実物=本物=軍支給品=レプリカじゃないもの と認識して下さい。

実物(軍支給品)

俗に言う実物とは、実際に軍に納入されてパイロットに使われるべき物のことを指します。


<フライトジャケットの一生>

  1.軍の予算計画により業者に発注

  2.納入業者はMILスペックに基づいて生産(不良品が出るのを考慮して多めに製造する)。

  3.使用する過程で破損した物や、退役した人物が軍に返納したものが
    払い下げ業者に払い下げられる。

いわゆる「デットストック」と言われる事実上の新品は、
上記2の時点で出るB級品(検査で不合格とされたもの)や、
多めに作って実際には納品されなかった過剰在庫分が放出されたものです。

中古品は、上記3のルートで出てきますが、
小遣い稼ぎの為に直接店に持ち込んでくる人もいるようです。


レプリカ

文字どおりのレプリカです。実物の古い物は、高価だったり、貴重だったりしますので、
実物を忠実に再現したレプリカなら手軽に雰囲気を楽しめます。
場合によっては、実物以上に人気を集める様な、もはや「実物を超えてしまった」レプリカ製品も存在します。

リアルマッコイズ

実物志向のフライトジャケットブームの火付け役。
とにかく重厚な作りが魅力だったが、経営破たんを起こしてしまいました。

バズリクソンズ

リアルマッコイズ並みの完成度を持ちながら手に入れやすい価格設定で
大異人気のあるブランド。ナイロン物ならまず間違い無いです。
※※※ 上記2ブランドには「実名モデル」という厄介な製品が存在しており、
ラベルの納入メーカーまでも、当時のメーカー名にしてしまっているため、
実物との見分けが非常に困難です。見る人が見ればわかるのですが・・・・

アルファ・インダストリーズ

知名度ナンバーワンのメーカー。MA−1ブームの頃に一気に有名になりましたね。
同社も実物志向のフライトジャケットブームに乗ってB−15等発売しましたが、
出来の方はどちらかと言えば雰囲気だけのものでした。
ただし、最後に出した復刻MA-1だけは別格で素晴らしい出来です。
※※※ 結果的に「実名モデル」なので、実物と間違えない様、注意が必要です。

ゴールデンベアー/アイスピワック

以前はアルファと人気を2分していましたが、現在では影が薄いですね。
タイタンクロスを使用したポリスジャケットやフライトジャケット製品は同社ならではの物。

ホープ / グリーンブライア

CABクロージング

C.C.マスターズ / フェローズ

一応は実物志向のフライトジャケットのブランドですが、
素材などに無頓着でイマイチ存在感が薄いメーカーです。

マッシュ

本来はサープラスショップですが、
数年前に立て続けに本物志向のフライトジャケットを発売しました。
デットストックの実物ジッパーや生地を使用した製品は、非常に人気がありましたが、
実物のパーツを使用している為、生産数が非常に少ないのが残念です。

ヒューストン

日本の老舗メーカー。非常にリーズナブルな製品を数多く発売しているが、出来はそれなり。
ただし、ナイロン製のCWU−36Pの出来は素晴らしく、実物そっくりなので要注意。

実物の見分け方

ラベルの見方

フライトジャケットを手にした時にまず初めに見るのはラベルですね。
大抵の場合、ラベルに書かれている内容を読み取れば、どういうものかの判断ができます。
ここでは、基本的なラベルの書式と書かれている意味について解説します。

品名・モデル名

ここでのキーワードは、「JACKET,FLYING,MAN’S・・」という部分で、
「飛行士の為のジャケット・・」つまりフライトジャケットであることを示しています。 
最後の「TYPE N−3B」がモデル名です。

MILスペック

ミルスペックとは米軍内で使用するあらゆる物に対して設定させている「規格」のことです。
材質、形状、サイズ、製法に至るまで厳格に定められており、規定内に納まらない品は納品できません。
MIL-J-6279F このうち、「J」はジャケットを示し、最後の「F」はサブタイプを示し、
この場合はN−3BのFタイプということになります。
(改良された部分について、スペックの内容が変更になると、順に付与されます)

DSAナンバー

DSAナンバーとは契約番号のことで、軍と納入メーカーとの間でかわされた契約に対して付番される物です。
この例では4番目に書かれている「64」が会計年度のことで、製造された年代の目安になります。
レプリカや民間向け製品の場合は、この契約ナンバーが書かれていませんので、
見分ける際の重要な要素となっています。

※DSA以外に、年代により、「DA−」 「DLA−」 「SPO−」 などがあります。いずれも契約番号です。
※60年代以前の、黒ラベルに金字の時代にはこの表記はありません。
※会計年度は、あくまで予算面での年度ですから、実際に製造された年とは限りません。

納入メーカー

実際に納入したメーカーのことですが、レプリカの場合はここにレプリカのメーカー名が書かれていることが多く
見分ける場合の一つの目安になります。

その他

上記以外の記述として、レプリカや民間向け製品の場合、
 「MADE IN USA」 という原産国表示が書かれていることがあります。
軍に納入されたものにはこのような表記はありませんので、一つの目安になります。

実名モデル

やっかいなのが、リアルマッコイズやバズリクソンズが発売した「実名モデル」で、ラベルに表記されたメーカー名までが
当時実在したメーカー名になっており、ラベルだけではまったく実物との見分けが付きません。
ポケットの中などに小さい別のラベルがあって、見分けられるものもあるようですが・・
個人的にはここまでやる神経が理解できません。メーカー側は「究極のレプリカ」などと調子にのってる様ですが、
はっきり言って中古市場を混乱させていることは確かです。まあ、世に出てしまった以上は仕方がないですね。

実物の納入メーカーが生産しているレプリカモデル

それから、古くから民間向けにも生産していたアルファのMA−1ですが、
アルファ社自体が実物の納入メーカーでもあるわけで、
見分けるのが難しい場合があります。特にオークションなどでは出品者に知識が無く、
実物として出品している例を多く見かけますので注意が必要です。
年代を追って民間向け製品のラベルの特徴を書いておきますので参考にしてください。

〜80年代

この頃から、中綿をポリエステルにしたMA−1のEタイプを生産していました。
ラベルは実物と同じようにポケットの内側に縫い付けられています。
見分ける部分は・・・
「DLAナンバーが無い」 「MADE IN USAとの原産国表示がある」 「ライニング(中綿)がポリエステル」

中綿がポリエステル(実物はウールパイル)なのですぐにわかるのですが、
ラベルだけに気をとられていると見間違えますのでご注意下さい。
この頃のラベルは実物にそっくりで一番まぎらわしいものとなっています。

〜90年代

MA−1以外のモデルも含め、アルファ製品のラベルには、ラベルの中央に3本の横線が入るようになりました。
これですぐにレプリカだとわかります。

その後3本線が太い1本線に変わりました。

現在

現在では、スペック表のラベル以外に、アルファ社のタブが付くようになり、
ごく最近のものは肩のシガレットポケットにもアルファ社のマークのタブがついているのですぐにわかります。

アルファ社 MA−1 68年復刻モデル

これも見分けるのが難しい製品で、アルファー社の実名モデルなのですが(まあ実名もへったくれもありませんが・・)
復刻版ということでDSAナンバーまで記入されており非常にやっかいです。唯一の判別点は、
原産国表示で、ラベルの最後の1行に、「MADE IN U.S.A」 と記入されていますので、
この表記があるものは復刻版です。

モノ自体は大変素晴らしいもので、まさにレプリカではなく、
実物製造メーカーならではの「復刻」モデルであることが実感できます。
私のコレクションの中でもお気に入りの1着となっております。